【プロに聞いた】家庭菜園でも美味しいシャインマスカットの育て方
美味しいシャインマスカットの育て方

大人にも子供にも大人気のシャインマスカット。
食卓に出せば、子供が取り合いながら食べるほどで、大人はひと粒ふた粒食べて、あとは子供が夢中で食べる姿を目を細めて眺める。なんてこともしばしばではないでしょうか。
今回は、そんな美味しいシャインマスカットを家庭菜園でつくれる育て方をご紹介します。
シャインマスカットは、実は初心者の方でもコツさえ抑えれば自宅でも育てることができるのです。
初心者の方にとって、「ブドウの栽培」というと難しそうに感じるのかもしれません。
確かに、野菜を育てるのとは違い、時間もかかりますし、聞いたことのない作業も多いので敬遠されがちです。
そこで今回は、グリーンロケットの記事らしく、誰でも簡単に始められるように、道具を揃えやすい鉢植えでの育て方を中心にご紹介します。
この鉢植えの栽培でも、将来的には5房の収穫が可能です。
さらに、ブドウ栽培のプロであるブドウ農家さんにも直接コツを聞いてきました!ぜひ参考にしてください。
この記事は、お忙しい方のために、目次の見出しを追うだけでも内容を理解できるようにしています。
詳しく知りたい方は、このまま読み進めていただくか、気になる小見出しをクリックしてみてください。
目次
シャインマスカットの育て方1:基本作業
水やり
みずやりのタイミングは、土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいまでたっぷり水をあげましょう。
水やりには水の補給以外に、土の中の空気や養分を交換する大切な役割もありますので、十分な量の水をあげる必要があります。
逆に、シャインマスカットを露地植えで育てる場合は、根が地中に広い範囲で広がり、そのうえ地中にはある程度雨も保水されているため、基本的に水やりは不要になります。
ただ、晴天の日が何日も続き、土が乾いてしまうと水切れを起こし、その後の実つきが悪くなってしまうことがあります。
その際は、水の量は、一般的には1㎡あたり20~30ℓが目安にたっぷり水やりします。
真夏に降雨がない日が続く場合には、土の状態をよく観察し、必要に応じて水をあげましょう。
肥料
肥料は、一度に大量に肥料を施しても、根が傷むか、吸収されないうちに根の範囲外に流れ出てしまいます。そのため、1年の間に元肥、追肥、お礼肥の3回に分けて施します。
2月に元肥として、ゆっくり効果の持続する有機質の肥料、6月に果実肥大を助ける追肥として化成肥料(チッソNーリン酸PーカリK=8-8-8のものなど)、9月~10月に消耗した木に養分を与えて回復させるお礼肥として化成肥料を施すのが一般的です。
シャインマスカット育て方2:植え付け
必要なもの
・シャインマスカットの苗
・10号の植木鉢
・鉢底石
・果樹用の土(無い場合は野菜用の土と鹿沼土を7:3で混ぜる)
・剪定ばさみ
植え付けの手順(11月~2月目安)
シャインマスカットの植え付けは休眠期の11月~2月の間に行うのがベストです。
まず鉢底に鉢底石を入れ、土を鉢の半分程度入れます。そこにシャインマスカットの苗を根を広げながら入れ、さらに上から土をいれます。
この時、接ぎ木の部分(木根元のこぶ状にプクッと膨らんだ部分)を土に埋めてしまわないように、地上に出して植えるよう注意します。
次に、苗の主幹を半分から1/3を残して、思い切って切り詰めます。こうすることで春以降に勢いのよい枝を伸ばすことができます。
最後に水をたっぷりやれば植え付けは終了です。
露地植えの場合は、植え付けの1か月前くらいに直径70cm、深さ50cm程度の穴を掘り、堆肥、石灰、有機肥料を適量混ぜ、埋め戻します。
1か月後、苗木を根を広げながら浅めに植えつけ、鉢植えと同じように主枝を切り詰めたっぷりと水をやれば完成です。
シャインマスカットの育て方3:枝の仕立て方(1年目の春~夏)
必要なもの
・10号の鉢に適した円形の支柱(またはオベリスク)※朝顔やバラを巻きつける支柱のようなもの
・麻ひも
仕立ての手順
鉢植えの場合は「あんどん仕立て」で育てるのがおすすめです。
植木鉢に円形の支柱を立て、枝をらせん状に誘引していく方法です。
ひもは8の字に結ぶと枝がずれにくくなります。また枝が太くなった時にひもが枝に食い込むことを防ぐことができます。
露地植えの場合は、一文字仕立てが簡単なのでおすすめです。
主枝を横一文字に伸ばし、そこから果実を付ける枝を垂直に伸ばす仕立て方です。
樹形が単純なので、初心者の方にも仕立てやすい方法です。
シャインマスカットの育て方4:芽かき、誘因(2年目春~夏)
難しそうな言葉に聞こえますが、やることは簡単です。
2年目の春頃になると、主枝から新しい枝が伸びてきます。これを新梢といいます。
新梢がたくさん生えすぎると、お互いに成長を抑制してしまう場合がありますし、枝が込み合ってしまい効率よく日光や風が当たらなくなってしまうので、20cm程度の間隔になるように抜いていきます。これを芽かきといいます。
簡単に言うと、芽かきとは、その年の春に芽吹いてきた枝を、20cmに1つ程度になるように他の枝を切りおとして、生育しやすい適度なバランスにしてあげるということです。
この残した新しい枝が伸びてきたら、全体に日光や風が当たるようにバランスよく支柱に誘引していきます。
また、くるくるっとした巻きづるが生えてくるのですが、今後の作業の邪魔になるので見つけ次第切り取っていきます。
シャインマスカットの育て方5:摘房、整房(2年目春~夏)

この頃から、待望のブドウの房の登場です。ここからは1か月はブドウの房づくりの作業が詰まっています。
まず、ここからの作業の流れを簡単に説明すると
・全体の房の数を、7~8房程度に摘房する。
・残した房のいらない花穂からいらないつぼみを切り、整房する。
・整房して残した膨らんだ実を、1房に30-35粒になるように摘粒する。
・袋掛けする。
これらを詳しく説明していきます。
シャインマスカットの摘房の方法
摘房とは、シャインマスカットを美味しく育てる為に、房の数を調整することです。
鉢植え栽培の場合は最終的に5房程度収穫ができますので、この段階で7~8房程度に数を調整してください。
この段階で少し余裕をもって数を置いておくのは、次の工程である、整房や摘粒で失敗してもいいようにするためです。特に初めのころは失敗はつきものですので、多めに房を置いておくのがいいでしょう。
シャインマスカットの整房の方法
整房は、房が10~15cmくらいまで成長してきたら行います。
整房とは、開花期の花穂から、いらないつぼみを切り詰めることで、高品質で美しい果房をつくるための作業です。
花穂とは、写真のような状態のものです。
ですが、皆さんは販売するためのシャインマスカットを作っているわけではないので、ざっくりで大丈夫ですよ。
整房の手順は以下の通りです。
・まず二股になっている花穂は小さい方を切り取る
・枝に近い上段にある半分程度のつぼみはハサミで切り取り、中段から下段にかけて15段程度(4~7cm程度)残すようにします。
花穂ができたらすぐにこの作業を初めても問題ありませんが、あまりに早すぎるとハサミの方が大きく、つぼみを切り落とせません。ハサミが入るようになったら始めましょう。
先の細いハサミがあると便利ですよ。作業は、一気に済ますのではなく、定期的に様子を見てその都度手を加えるようなイメージです。
シャインマスカットの育て方6:摘粒、袋かけ(2年目夏)

ここまでくればシャインマスカットの作業も最終段階です。
シャインマスカットの摘粒
摘粒とは、つきすぎた果粒を間引く作業のことです。密着した果粒が割れることを防ぎ、養分ロスを防いで果粒を大きく甘くすることが目的です。
シャインマスカットの場合は、最終的に30~35粒になるように摘粒します。
早く始めすぎると最後の出来上がりののイメージがつきにくく、遅すぎると軸が太くなりすぎて切りにくくなってしまいます。
このあたりは何年か作業をすることで、自分なりのタイミングがつかめていくと思います。
最後に、摘粒がうまくいった果実は残しておき、余分に残しておいた果実を摘房します。
シャインマスカットの袋掛け

摘粒が終わったらすぐに袋掛けをして、収穫を待ちます。
袋掛けをすることで、病気や虫から果実を守ってくれます。うっかり袋の口が開いていると隙間から虫が入ってきたり、雨が入って病気の原因になってしまうので、口はしっかりと閉めるようにしましょう。
シャインマスカットの収穫(2年目8月中旬~9月前半頃)
8月中旬ごろから9月前半ごろになれば、シャインマスカットの収穫時期です。
一粒食べてみて、おいしいと感じるようであれば出来上がりです。
袋を外し、落とさないように軸を持ちながらハサミで切り取って収穫しましょう。
この時、落ちてしまう可能性があるのでできるだけ果粒は触らないようにするのがコツです。
病気予防のために雨よけを用意しよう
薬剤なしで「黒とう病」を防ぐ方法
ブドウの代表的な病気に「黒とう病」という病気があります。
黒とう病は、新梢や葉、果実に黒い斑点が付いてしまう病気です。黒とう病が進行すると、生長に影響を及ぼしてしまいます。
この病気は雨が原因で広がる病気です。なので、パイプと雨よけシートなどを使った雨よけを設置することで病気の予防をすることができます。
また、雨よけはカラスなど、鳥の食害の予防にも効果があります。
薬剤を使うことで予防する方法もありますが、できるだけ薬剤わずに育てたいという方にはおすすめの方法です。
ブドウ農家さんからのアドバイス
ジベレリン処理はタイミングが難しい。数年は開花の様子を観察しよう
シャインマスカットの特徴の一つに、種が無いことがあげられます。実は種を無くすためには、摘粒の後に「ジベレリン処理」という作業を2回する必要があるのですが、今回の工程紹介では省いています。
その理由はタイミングが難しいからです。
一般的に、一回目のジベレリン処理は花が満開になった日~3日目まで、二回目は一回目の処理日から10日~15日目と言われていますが、特に初めて方の場合、満開の判断が難しいと思います。失敗すると房が曲がってしまい使い物にならなくなってしまうのです。
そのため、数年はよーく花が咲くのを観察しましょう。写真を撮ってどの状態が開花なのか来年に活かすのもおすすめです。
ジベレリン処理をしないので数年は種ありができますが、味はシャインマスカットです。時間をかけて、ゆっくり学びましょう。
※ジベレリン処理についての詳細な時期や、用意するものなど、詳しい情報を関連記事内にてご案内しています。
もったいないと思わず摘房、摘粒はしっかりと
「せっかくできた房や粒を落とすのはもったいない…」
摘房、摘粒をするときにはそう思うかもしれません。
ですが、ここでしっかり落としておかないと、ブドウの生長に大きく影響してしまいます。
摘房をしておかないと、養分ロスが起こり一つずつの果実が小さくなってしまいますし、摘粒をしないと、粒同士がぶつかって実が潰れたり、実が小さいままになってしまいます。
もったいないという気持ちはすごくわかりますが、摘房、摘粒はしっかりと行いましょう。
まとめ
シャインマスカットの栽培は、栽培期間は長く、手数も多いですが一つ一つの作業自体はそんなに難しいものではありません。
また、一度植えれば何年も継続して収穫することができるのも大きな魅力です。友人にプレゼントしても喜ばれそうですね。
慣れてきたら露地に植え替えて、たくさんの収穫を目指しても良いでしょう。
ぜひ参考にして、シャインマスカット栽培にチャレンジしてみてください。